葉の形を知ろう④~葉の付き方の謎に迫る【phyllotaxy】

はじめに

植物の葉にはたくさんの形があります。

葉の形だけで植物の種類を見分けられることも多いです。

「植物の種類をもっと覚えたいけどポイントがよくわからない・・・」

「何となく、植物の葉って形が違うのはわかるけど、どう違うかは知らないな・・・」

そのような方のために、植物の形に注目し、植物を深く知っていくためのポイントを押さえていきたいと思います。

今回は葉の形を知る上で重要なポイントの1つである、葉の付き方に注目して紹介します。

最後に確認クイズもあるのでぜひ挑戦してみてください♪

葉の付き方の違い

植物の葉の形は、さまざまな環境に合わせて進化してきました。

その中で、葉のつき方は、植物の生長に必要な光合成を行う上で、重要な役割を果たすと考えられています。

葉の付き方には決まった規則性があり、葉の付け根の配列のしかたのことを専門用語で「葉序(ようじょ)」といいます。

ではここからは、葉の付き方「葉序」の違いをみていきます。

対生(たいせい)葉序
対生とは、茎の1節に対して、2枚の葉が対(つい)になります。最も一般的なのは十字対生であり、隣同士の節の葉が直交します。特に茎が四角い仲間(例:シソ科)は十字対生が分かりやすいです。
      
互生(ごせい)葉序
互生とは、茎の1節に対して1枚の葉が付きます。3つの葉序の中で最も多いです。互生葉序の多くは、茎に対して葉が「らせん状」に付き、「らせん葉序」とも呼びます。
      
輪生(りんせい)葉序
輪生とは、茎の1節に対して3枚以上の葉が付きます。葉の数nに対して、n輪生と呼びます(上図は4輪生)。

※節:葉がつく部分

一般的には「葉序」の部分を省略して、単に「対生」、「互生」、「輪生」と表現することが多いです。

このような葉の付き方の違いは、付けている葉同士が重なり合わず、なるべく多くの光を取り入れて成長するために進化した結果と考えられています。

一方、同一個体内でも異なる葉序を示すこともあります。例えば、互生する植物は、芽生えは対生であり、それ以降は葉が互生することが多いです。また、ヤマノイモのように、植物体の下部は互生し、上部は対生するような植物もあります。

対生する葉の節間が短く、輪生のように見える対生葉序は、「偽輪生」といいます。また、ヤエムグラ属やアカネ属のように本来の葉と托葉が変化したものが輪生するようにみえるものも偽輪生といいます。

ヒトリシズカの偽輪生(対生する葉の節間が短く、輪生のように見える)
ヤエムグラの偽輪生(真の葉は2枚で葉の腋に芽がつき、残りは托葉)

一方、互生する葉の節間が短く、輪生のように見える互生葉序のものは、「輪生状」といいます。ツツジ科に多いです。

また、節間が極端に短く、ギュッと短縮された枝や茎の複数の節から葉が束のように出る様子を「束生」といいます。束生は、互生葉序、対生葉序、輪生葉序のいずれも可能性があります。
 

束生するアケビ

空間にある葉の配置

葉は、成長や繁殖に欠かせない養分を作り出す大切な器官です。そのため、同じ植物内でも葉同士の重なり合いを少なくした方が、効率よく養分を作り出すことができます。

葉の空間配置のパターンは、大きく分けると3パターンあります。

背腹型
 茎(枝)の節間が長く、葉同士は離れてつきます。茎(枝)は平らな地面に対して水平か斜めに伸び、葉も茎とほぼ同じ平面(または、ゆるやかな曲面)に並びます。
 例:イボタノキ、ヤブニッケイ

直立型
 茎(枝)の節間は短く、葉同士は集まってつきます。茎(枝)は平らな地面に対してほぼ垂直に伸び、葉は茎の先端を取り巻くように並びます。葉の付け根で重なり合わないように、長い葉柄をもつものや、葉が細長いものが多いです。 例:トベラ

イネ型
 イネ科やカヤツリグサ科などの細い葉をもつ草は、茎の下部分に集中的についた葉が立ち上がるようについています。葉の付け根の重なり合いは大きいですが、細長い葉のため、全体に光を届けることができます。

 互生・対生葉序は背腹型と直立型両方ともあり、輪生葉序は直立型をとります。

 一方、同じ植物体内であっても、直立型、背腹型の両方を備える植物もあります。

おまけ(さらに詳しく)

「らせん葉序」
葉の付け根部分(葉柄が付いている部分)を葉が出た順に辿ると「らせん」が描けます。
その「らせん」を辿って元の葉が何枚目の葉と重なるかをみると、決まった規則性を見つけられます。
元の葉と重なる葉までの葉数をa、「らせん」の回転数をbとすると、葉序はb/(a+1)で表すことができます。
また、隣同士の葉が茎軸を中心としてなす角度を「開度(かいど)」といいます。
葉序で表されたb/(a+1)の数値に360°を掛ければ開度を表す角度となります。(1/2葉序×360°=180°(開度))

「直列線」
葉の付け根部分(葉柄が付いている部分)をつないだ線が、茎と平行になる線を直列線といいます。
この直列線の数によって葉序を表現することがあります(直列線が2本ある対生葉序の葉を2列対生、直列線が3本ある互生葉序の葉を3列互生など)。
互生葉序は、直列線の数nに対して、n列互生と表現します。
対生葉序では、2列対生以外に、直列線が4本で等間隔の十字のものは先ほども説明した十字対生、直列線4本が不等間隔並ぶものを複2列対生、6本以上のものを複系2列対生と表現します。
輪生葉序は、下の節の葉の中間部分に上の節の葉がつくため(下の葉の隙間に上の葉が出ている)、ふつう直列線は各節につく葉の枚数の2倍となります。

「コクサギ型葉序」
葉の付き方が、「右、右、左、左」のように2枚ずつ縦に並んでみえる互生葉序のことを「コクサギ型葉序」といいます(厳密には、葉面は同じ方向だが、付け根の開度が180°、270°、180、90、180°、270°)。葉序は、輪生→対生→コクサギ型→互生と進化すると考えられており、コクサギ型は、対生→互生の進化途中にあると考えられています。 

覚えたい人のための確認クイズ!!

①この葉の付き方は〇〇葉序です。〇〇に入る言葉は?

 

②茎の1節に対して3枚以上の葉が付く付き方を何葉序というでしょう

 

③イボタノキの空間配置は何型でしょう?

 

④茎(枝)は平らな地面に対してほぼ垂直に伸び、葉は茎の先端を取り巻くように集まってつくのは空間配置の何型でしょう?

 

 ヤエムグラの葉の付き方は〇輪生といいます。〇に入る言葉は何でしょう?

 

 

まとめ

いかがでしたか?

今回は葉の形の違いを、「葉の付き方」に注目して紹介しました。

これからもっと植物を覚えていきたい方はぜひ参考にしてみてください。

参考文献・HP
岩瀬徹・大野啓一(2004)『写真でみる 植物用語』 全国農村教育協会
茂木透・石井英美・崎尾均・吉山寛・太田和夫・勝山輝男・高橋秀男・城川四郎・中川重年(2000) 『山溪ハンディ図鑑3~5 樹に咲く花①~③』山と溪谷社
・前川文夫,コクサギ型葉序と其意義,植物學雑誌(1948),第6巻 第715-716.
・「福原のページ(植物形態学・生物画像集など)」福岡教育大学  福原 達人 https://staff.fukuoka-edu.ac.jp/fukuhara/index.html 
・「BotanyWEB」筑波大学 中山剛 https://www.biol.tsukuba.ac.jp/~algae/BotanyWEB/

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