晩秋から冬に探そう!赤い実のなる木22選~バードウォッチング・クラフトへの活用も~ 

1.はじめに

晩秋から冬にかけて、自然の中を歩くと目に留まるのが、鮮やかな赤い実をつけた木々です。

寒さが深まり、緑が少なくなる季節にあって、赤い実はまるで自然が残した宝石のように風景を彩ります。

これらの実は、鳥たちにとって貴重な食糧となるだけでなく、私たちの目を楽しませてくれる存在でもあります。

今回は、晩秋から冬にかけて観察できる赤い実のなる木を紹介しながら、それらの特徴や楽しみ方について解説します。

この季節ならではの植物たちの魅力を知ることで、寒い日でも自然散策がもっと楽しくなる方法を探ってみませんか?

2.寒い時期に見つけられる赤い実のなる木たち22種

※植物の名前を押すと下に書かれた植物の詳しい説明に飛びます。

写真名前科名生える場所実る時期
アズキナシバラ科落葉樹林の乾燥した尾根筋や斜面に多い10月~11月頃
カマツカバラ科山地の日当たりのよい林縁に育つ10月~11月頃
ノイバラバラ科河原、草原、林縁などに普通に生える9~11月頃
カナメモチバラ科山地の斜面、乾燥した尾根筋、沿海地などに生える12月頃
イイギリイイギリ科山地のやや湿り気のある所に多い10~11月
アオキアオキ科照葉樹林内や明るい雑木林12~5月
アキグミグミ科
河原、草原など日当たりのよい場所に生える
9~11月
ソヨゴモチノキ科山地の乾いた林縁や林内10~11月
クロガネモチモチノキ科山野の常緑樹林内11月~12月
ナナミノキモチノキ科山地の常緑樹林内10~11月
モチノキモチノキ科海岸に近い山地の常緑樹林内11~12月
タラヨウモチノキ科山地の常緑樹林内11月
シロダモクスノキ科暖地の山野の比較的湿潤なところ翌年の10~11月
ミヤマシキミミカン科低山の林内12月~2月
メギメギ科山地や丘陵の林縁や原野10~11月
オトコヨウゾメガマズミ科山地の樹林内や林縁9~11月
ガマズミガマズミ科丘陵~山地9~11月
クコナス科日当たりのよい草原、海岸、河原、林縁など9~11月
アリドオシアカネ科常緑樹林内11月~1月
マンリョウサクラソウ科常緑樹林内11月~4月
ヤブコウジサクラソウ科山地の林内12月頃
センリョウセンリョウ科暖地の林内12~3月

※植物の名前を押すと下に書かれた植物の詳しい説明に飛びます。

3.寒い時期に見つけられる赤い実のなる木たち 22選~さらに詳しく~ 

【バラ科 ナナカマド属 学名:Micromeles alnifolia】 ※名前を押すと一覧に戻ります

・落葉樹、10~15mに成長
・落葉樹林の乾燥した尾根筋や斜面に多い
・実は10月~11月頃熟す
・庭木はまれで、建築材になどに利用
・果実が小さくナシの形に似ていることが名前の由来

【バラ科 カマツカ属 学名:Pourthiaea villosa var. villosa】 ※名前を押すと一覧に戻ります

・落葉樹、5~7mに成長
・山地の日当たりのよい林縁に育つ
・実は10月~11月頃熟す
・庭木や盆栽に利用
・材が丈夫で鎌の柄など使われたことが名前の由来 

【バラ科 バラ属 学名:Rosa multiflora】 ※名前を押すと一覧に戻ります

・落葉樹、2mほどに成長、トゲあり
・河原、草原、林縁に普通に生える
・実は9~11月頃に熟す
・庭木、クラフトなどに利用
・類似種:テリハノイバラ、モリイバラ、ヤブイバラ

【バラ科 カナメモチ属 学名:Photinia glabra】 ※名前を押すと一覧に戻ります

・落葉樹、5~10mに成長、毒あり
・山地の斜面、乾燥した尾根筋、沿海地などに生える
・実は12月頃に熟す
・生垣や庭木などに利用
・名前の由来は、モチノキに似ており、材が扇の要に使われた説がある

 【イイギリ科 イイギリ属 学名:Idesia polycarpa 】 ※名前を押すと一覧に戻ります

・落葉樹、10~15mに成長
・山地のやや湿り気のある所に多い
・実は10~11月に熟す
・成長が早く、公園樹などに利用
・キリの葉に似て、ご飯を包んだことが名前の由来
・雄と雌の木が別(雌雄別株)、ときに雌雄雑居性

【アオキ科 アオキ属 学名:Aucuba japonica var. japonica】 ※名前を押すと一覧に戻ります

・常緑樹、2~3mに成長、イヌやネコに対して毒性あり
・照葉樹林内や明るい雑木林
・実は12~5月に熟す
・庭木に利用される
・雄と雌の木が別(雌雄別株) 

 【グミ科 グミ属 学名:Elaeagnus umbellata var. umbellata】 ※名前を押すと一覧に戻ります

・落葉樹、2~3mに成長、トゲあり
・河原、草原など日当たりのよい場所に生える
・実は9~11月に熟す
・海岸や道路の土留めなどに利用

【モチノキ科 モチノキ属 学名:Ilex pedunculosa】 ※名前を押すと一覧に戻ります

・常緑樹、3~7mに成長、毒あり
・山地の乾いた林縁や林内
・実は10~11月に熟す
・庭木や器具材に利用
・かたい葉が風にそよいで音を立てることが名の由来
・雄と雌の木が別(雌雄別株) 

【モチノキ科 モチノキ属 学名:Ilex rotunda】 ※名前を押すと一覧に戻ります

・常緑樹、10m以上に成長、毒あり
・山野の常緑樹林内
・実は11月~12月に熟す
・庭木、街路樹などに利用
・樹皮から鳥もちがとれ、葉柄や枝が紫色を帯びることが名前の由来
・雄と雌の木が別(雌雄別株) 

【モチノキ科 モチノキ属 学名:Ilex chinensis 】 ※名前を押すと一覧に戻ります

・常緑樹、10mに成長
・山地の常緑樹林内
・実は10~11月に熟す
・庭木、器具材などに利用
・美しい実がたくさんなるからなど、名の由来は諸説ある
・雄と雌の木が別(雌雄別株) 

【モチノキ科 モチノキ属 学名:Ilex integra】 ※名前を押すと一覧に戻ります

・常緑樹、6~10mに成長
・海岸に近い山地の常緑樹林内
・実は11~12月に熟す
・庭木・公園樹などに利用、材は固く、櫛や印材などに利用
・雄と雌の木が別(雌雄別株) 

【モチノキ科 モチノキ属 学名:Ilex latifolia 】※名前を押すと一覧に戻ります

・常緑樹、10~20mに成長
・山地の常緑樹林内に生える
・実は11月に熟す
・庭木に利用
・葉の裏をひっかくと黒くなり文字が書けるため、インドの多羅樹に例えたことが名の由来
・雄と雌の木が別(雌雄別株) 

【クスノキ科 シロダモ属 学名:Neolitsea sericea 】※名前を押すと一覧に戻ります

・常緑樹、10~15mに成長、毒あり
・暖地の山野の比較的湿潤なところに生える
・実は翌年の10〜11月に熟す
・材を小細工、種を燈油に利用
・雄と雌の木が別(雌雄別株) 

【ミカン科 ミヤマシキミ属 学名:Skimmia japonica var. japonica】※名前を押すと一覧に戻ります

・常緑樹、1~1.5mに成長、毒あり
・低山の林内に生える
・12月~2月に熟す
・庭木、生垣に利用
・雄と雌の木が別(雌雄別株) 
・類似種:ツルシキミ

 【メギ科 メギ属 学名:Berberis thunbergii】※名前を押すと一覧に戻ります

・落葉樹、2mに成長、トゲあり、毒あり
・山地や丘陵の林縁や原野
・実は10~11月に熟す
・生垣に利用、材にはアルカロイドを含む
・葉や枝を洗眼薬にしたことが名の由来

【ガマズミ科 ガマズミ属 学名:Viburnum phlebotrichum】※名前を押すと一覧に戻ります

・落葉樹、3mに成長
・山地の樹林内や林縁
・実は9~11月に熟す
・ガマズミ類をまとめて「ヨソゾメ」と呼ぶ地域があり、ガマズミに比べて実がやせているため「オトコ」がついたことが名の由来といわれる

【ガマズミ科 ガマズミ属 学名:Viburnum dilatatum】※名前を押すと一覧に戻ります

・落葉樹、5mに成長
・丘陵~山地に生える
・実は9~11月に熟す
・庭木などに利用
・漢名の莢迷「キョウメイ」が転じて「ガマ」となり、酸実「ズミ」と結びついたのが名前の由来
・類似種:コバノガマズミ

【ナス科 クコ属 学名:Lycium chinense 】※名前を押すと一覧に戻ります

・落葉樹、1~2mに成長、トゲあり
・日当たりのよい草原、海岸、河原、林縁など
・実は9月~11月に熟す
・若葉や果実は食用となる

【アカネ科 アリドオシ属 学名:Damnacanthus indicus】※名前を押すと一覧に戻ります

・常緑樹、0.2~0.6mに成長、トゲあり
・常緑樹林内に生える
・実は11月~1月に熟す
・トゲが鋭く、アリでも通すという意味が名前の由来

【サクラソウ科 ヤブコウジ属 学名:Ardisia crenata】※名前を押すと一覧に戻ります

・常緑樹、0.3~1mに成長、イヌやネコなどに毒性あり
・常緑樹林内に生える
・実は11月頃熟し、翌年の4月まで残る
・庭木に使われるほか、「万両」という名前で縁起がいいため正月飾りに使われる

【サクラソウ科 ヤブコウジ属 学名:Ardisia japonica】※名前を押すと一覧に戻ります

・常緑樹、0.1m~0.2mに成長、毒あり
・山地の林内に生える
・実は12月頃熟す
・庭木に使われるほか、別名が「十両」であり、名前が縁起がいいため正月飾りに使われる

【センリョウ科 センリョウ属 学名:Sarcandra glabra】※名前を押すと一覧に戻ります

・常緑樹、0.5m~1mに成長
・暖地の林内にはえる
・実は12~3月に熟す
・庭木に使われるほか、「千両」という名前で縁起がいいため正月飾りに使われる
・実が上向きに付き、似ているマンリョウは下向きに実が付く

4.赤い実を食べる鳥たち

寒さが厳しくなり、食べ物が少なくなる季節は、鳥たちにとって赤い実は貴重な栄養源です。

鳥の目は、私たち人間の目よりも色を識別する能力が優れており、人間が見分けられる「赤・緑・青」に加えて「紫外線」を見ることができます。

鳥たちは、樹木の実が反射するこれらの光を手掛かりに、実の位置を見つけ出しているのです。

赤い色は、葉の緑色と補色の関係にあるため、自然の中でも目立ちやすい特徴を持ち、光の反射率も高いことがわかっています。

この仕組みを利用して、植物は鳥に種を食べてもらい、遠くへ運ばせることで効率よく子孫を広げているのです。

一方で、種まで食べてしまう昆虫には赤い色が見えにくいといわれ、赤い実は鳥にターゲットを絞った巧妙な植物の戦略とも言えるでしょう。


このような赤い実を食べにくる鳥たちの観察(バードウォッチング)も冬の時期にぜひオススメです。

5.注意点

・野外でクラフトなどに赤い実を使用したい場合は、採取が可能な場所か確認しましょう。

・今回紹介した植物の中には、トゲや毒を含む植物もあるので注意が必要です。

・今回紹介した植物の中には、メスとオスの木がそれぞれ分かれているものもあります。実はメスの木になるので注意してください。

・実が熟す時期は植物図鑑を参考にした目安です。その年の気候や地域によって差が出ます。

6.おわりに

いかがでしたか?

晩秋から冬にかけての自然散策では、赤い実をつけた木々が楽しませてくれるかもしれません。

見つけた実の名前を調べたり、鳥との関係を想像したりしながら、寒い季節ならではの発見を楽しんでみませんか?

ぜひ参考にしてみてください。

参考文献・HP
茂木透・石井英美・崎尾均・吉山寛・太田和夫・勝山輝男・高橋秀男・城川四郎・中川重年(2000) 『山溪ハンディ図鑑3~5 樹に咲く花①~③』山と溪谷社
「鳥たちが教えてくれること Vol.3 赤い実の秘密」Canon Global.Bird Branch Project 上田 恵介
・名波哲,「日本産樹木の鳥散布型果実の光反射スペクトル:その多様性と適応的意義」,KAKEN,22年度実地報告書

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