はじめに
植物の葉にはたくさんの形があります。
葉の形だけで植物の種類が分かることも多いです。
「植物の種類をもっと覚えたいけどポイントがよくわからない・・・」
「何となく、植物の葉って形が違うのはわかるけど、どう違うかは知らないな・・・」
そのような方のために、植物の形に注目し、植物を深く知っていくためのポイントを押さえていきたいと思います。
今回は葉の形を知る上で重要なポイントの1つである、葉の切れ込みに注目して紹介します。
最後に確認クイズもあるのでぜひ挑戦してみてください♪
葉の切れ込みとは
葉の切れ込みとは、下の図のように葉のふちに裂け目のような切れ込みがある状態をいいます。
代表的な植物として、カエデ属の仲間や、シダ植物には切れ込みのある種が多くあります。
切れ込みの形
一般的に、葉の切れ込み方には「羽状裂(うじょうれつ)」と「掌状裂(しょうじょうれつ)」という2種類があります。
「羽状裂(うじょうれつ)」は、下の図のように葉が鳥の羽状に切れ込んだ葉のことを指します。
一方、「掌状裂(しょうじょうれつ)」は、下の図のように掌(てのひら)状に切れ込んだ葉のことを指します。
実物と葉を比べてみると「羽状裂」と「掌状裂」のイメージができたかと思います。
切れ込みの深さ
葉の切れ込み方は、切れ込む深さによっても違いがあり、種を特定する上で重要なポイントの1つです。
羽状裂(鳥の羽状に切れ込んだ葉)
上の図のように、それぞれ切込みが浅いものから順に「浅裂」、「中裂」、「深裂」、「全裂」に分けられます。
切れ込みの深さは赤い点線の矢印で表しており、浅裂から全裂に向かって点線が長くなり、黒い実線の中央脈までの切れ込みが深くなっています。
それぞれの羽状裂に対する具体的な植物の例は以下の通りです。
切れ込み方 | 例 |
---|---|
羽状浅裂 | オオクジャクシダの羽片、 ベニシダの羽片 |
羽状中裂 | タカネヒゴタイ、 ユウガギク |
羽状深裂 | オトコエシ、オミナエシ、 |
羽状全裂 | オサシダ、シシガシラ、 タムラソウ |
掌状裂(掌(てのひら)状に切れ込んだ葉)
掌状裂も同様に、以下の図の通り、切込みが浅いものから順に「浅裂」、「中裂」、「深裂」、「全裂」に分けられます。
切れ込みの深さは赤い点線の矢印で表しており、浅裂から全裂に向かって点線が長くなり、切れ込みが深くなっています。
全裂(ぜんれつ)では切れ込みが葉柄に達しています。
それぞれの羽状裂に対する具体的な植物の例は以下の通りです。
切れ込み方 | 例 |
---|---|
掌状浅裂 | ズダヤクシュ、 ウリノキ、ユキノシタ |
掌状中裂 | ジンジソウ、カジカエデ、 オオモミジガサ |
掌状深裂 | ミツバフウロ、ヤブレガサ |
掌状全裂 | ウマノミツバ、バイカオウレン |
注意点
葉の切れ込みの形や深さは、図鑑によって表現の仕方が異なる場合があり、「この植物はこの切れ込み方が絶対!」というものではありません。
例えば、キクアザミを図鑑でみると、「浅裂」と書いてあるのもあれば、「浅裂~中裂」と書いてあるものもあります。
図鑑ではそれぞれをきっちり区別せず、「浅裂~中裂」というように、広く表現していることも多いです。
これは、葉自体が変異の大きいものなので、きっちり分けられるものではないからです。
同じ植物の中でも、若い時の葉と、成熟した時の葉の形が異なることが、多くの植物で知られています。
ですので、そこまで深く考えすぎる必要はありません。
まずは、どのような分類の仕方があるのか(今回は「切れ込み」)を知った上で、自分なりに目の前にある葉の形を観察して見分けてみることが大切です。
これが自ら植物を覚えていくということにつながります。
覚えたい人のための確認クイズ!!
①掌(てのひら)状の葉の切り込み方を何というでしょう?
②これらの切れ込み方(深さ)を何というでしょう?
③シダ植物に多い葉の切れ込み方は何というでしょう?
④この中で掌状深裂はどれでしょう?
a.オサシダ b.ヤブレガサ c.ユウガギク
⑤オミナエシは羽状裂と掌状裂のどちらでしょう?
まとめ
いかがでしたか?
今回は葉の形の違いを、「切れ込み方」に注目して紹介しました。
これからもっと植物を覚えていきたい方はぜひ参考にしてみてください。
参考文献
岩瀬徹・大野啓一(2004)『写真でみる 植物用語』 全国農村教育協会
桶川修・大作晃一(2020)『くらべてわかるシダ』山と溪谷社
清水建美 (2001)『図説 植物用語辞典』八坂書房