はじめに
植物の葉にはたくさんの形があります。
葉の形だけで植物の種類が分かることも多いです。
「植物の種類をもっと覚えたいけどポイントがよくわからない・・・」
「何となく、植物の葉って形が違うのはわかるけど、どう違うかは知らないな・・・」
そのような方のために、植物の形に注目し、植物を深く知っていくためのポイントを押さえていきたいと思います。
今回は葉の形を知る上で重要なポイントの1つである、葉のふちに注目して紹介します。
最後に確認クイズもあるのでぜひ挑戦してみてください♪
葉のふちとは?
植物の葉は基本的に、葉身(ようしん)、葉柄(ようへい)、托葉(たくよう)の3つの器官から成り立ちます(葉の構造については、こちらの記事)。
このうち、葉身(ようしん)は、平らに広がった葉の部分全体を示します。
葉のふちは、下の図の赤い部分に示したように、葉身の周縁部のことを示しています。
専門用語では「葉縁(ようえん)」といいます。
葉のふちに注目して、いろいろな植物を観察してみると、実にたくさんの形があることがわかります。
葉のふちにどんな違いがあるの?
それでは、ふちの形の違いをそれぞれみていきます。
代表的なふちの形は、7種類あります。
ⅰ.全縁(ぜんえん)
説明 | 例 |
縁(ふち)が滑らかで鋸歯がない. ギザギザしていない. | タブノキ、コブシ など |
ⅱ.鋸歯(きょし)
説明 | 例 |
ノコギリの歯状の ギザギザした切れ込みのこと. ギザギザは葉先を向いている. | ガクアジサイ、ムクノキ など |
ⅲ鈍鋸歯(どんきょし)
説明 | 例 |
円い歯状の ギザギザした切れ込みのこと. 円鋸歯状ともいう. | エノキ、アキニレ など |
ⅳ.重鋸歯(じゅうきょし)
説明 | 例 |
それぞれの大きな鋸歯の中に さらに小さな鋸歯がある. | イヌシデ、シラカバ など |
ⅴ.波状(はじょう)
説明 | 例 |
縁(ふち)が波のような弓形のこと. | ブナ、マンリョウ など |
ⅵ.歯牙(しが)
説明 | 例 |
歯牙のように鋸歯の先が山形になる. 鋸歯の先は葉先を向かない. 歯状(しじょう)ともいう. | ヒイラギ 、ハクウンボク など |
ⅶ.欠刻(けっこく)
説明 | 例 |
縁に不揃いの切れ込みが入る. | ヤマモミジ、イラクサ など |
まとめると、下の図のようになります。
語呂を考えてみました!(笑)
「全員(全縁)きょ(鋸)とん(鈍)、重(重)い波(波)で歯(歯)が欠(欠)けた」
この他に、鋸歯が細かいものを細鋸歯(さいきょし)と分類することもあります(例:アワブキ、ヤブツバキなど)。
また、葉のふちに毛がある状態を、毛縁(もうえん)または縁毛(えんもう)と表現することがあります(例:ハナヒリノキ など)。
注意点
葉のふちを使って植物を分類する時は、まず鋸歯があるか、鋸歯がないかがポイントになります。
その場合、全縁以外のものは「鋸歯がある」に分類されます。
葉のふちの種類に「鋸歯」があるのが少しややこしいですが、少しでもふちに凹凸がある場合は「鋸歯がある」という認識になります。
つまり、全縁以外の「鋸歯」、「鈍鋸歯」、「重鋸歯」、「波状(はじょう)」、「歯牙(しが)」、「欠刻(けっこく)」は、鋸歯のある葉の中でのふちの形状の違いを示しています。
そのため、図鑑や検索表(分類の本)には、上記の「波状(はじょう)」、「歯牙(しが)」、「欠刻(けっこく)」のふちの種類が、「波状鋸歯」、「歯状鋸歯」、「欠刻状鋸歯」といった表現で記されているものもあります。
また、鋸歯の種類が組み合わさる葉も存在します(例:欠刻状の重鋸歯のヤマモミジなど)。
葉のふちの形は、図鑑によって表現の仕方が異なる場合があり、「この植物はこのふちの種類が絶対!」というものではありません。
まずは、どのように分類できるかを知った上で、自分なりに目の前にある葉のふちの形を観察してみることが大切です。
全縁か、鋸歯があるかを判断できるだけでも、植物の種類を特定する大きなヒントとなります。
~おまけ~
同じ種類の植物でも葉のふちが全く異なるものも存在します。
例えば、先ほど歯牙の例で挙げたヒイラギは、若い木では歯牙がよく発達しますが、老木になると全縁の葉になります。
また、同一植物内であっても植物体の中で全縁と鋸歯が両方みられるものも多くあります(例:エゴノキ、ヤマウルシなど)。
この場合、分類で鋸歯の有無を選択する時は、「鋸歯がある」を選ぶとよいでしょう。
その他に、動物の食害や剪定を重ねることにより、同一植物内であっても葉が消失と再生を繰り返した部分だけ鋸歯が強くなる例もあるようです(具体例が集まり次第、追記します)。
覚えたい人のための確認クイズ!!
①葉のふちのことを専門用語で何というでしょう?
②この葉のふちは何という名前でしょう?
③この葉のふちは何という名前でしょう?
④この中で波状鋸歯はどれでしょう?
a.コブシ b.イラクサ c.ブナ
⑤円い歯状のギザギザした切れ込みで、円鋸歯状ともいう葉のふちは何というでしょう?
まとめ
いかがでしたか?
今回は葉の形の違いを、「縁(ふち)」に注目して紹介しました。
これからもっと植物を覚えていきたい方はぜひ参考にしてみてください。
参考文献
岩瀬徹・大野啓一(2004)『写真でみる 植物用語』
巌佐庸・倉谷滋・斎藤成也・塚谷裕一(2013)『岩波生物学辞典 第5版』岩波書店
清水建美 (2001)『図説 植物用語辞典』八坂書房
NPO法人 埼玉県絶滅危惧植物種調査集団(2014)『フィールドで使える 図説 植物検索ハンドブック』さいたま出版会