アオキ科 Aucubaceae アオキ属 Aucuba 常緑低木
1.分布・生育環境
北海道南部~沖縄に分布。
常緑樹林に多いが、明るい雑木林や植林地にもみられる。耐陰性は高いが、乾燥には弱く、適度に湿った低木層に生育。
2.形態
全体
高さ2〜3m、直径6cmほどに成長。枝は上部でよく枝分かれする。樹皮は緑色で灰褐色の細い溝があり、横長の皮目がある。老木は灰褐色で、縦に細かく裂ける。若い枝は緑色で無毛。光沢がある。
※以下は、各部位の説明が長文になるのでブロックに区切っています
葉
葉は、枝の上部に対生につく。
葉身は長さ8〜25cm。
幅2〜12cmの卵状長楕円形。
先端はとがり、基部は広いくさび形、縁に粗い鋸歯がある。
質は厚く、表面は深緑色で光沢がある。両面とも無毛。乾くと黒くなる。
葉柄は長さ1〜6cmで無毛。
浅い溝がある。
花
花期は3〜4月。
雄の木と雌の木がある、雌雄別株。
前の年に伸びた枝の先に円錐状の花序を出す。花序は紫褐色の小さな多数の花からなる。
雌雄とも花は直径約1cm。花びらは4個。花びらは長い卵形で、先がとがる。
雄花には雄しべが4個あり、葯は淡黄色。雌花は中央に花柱があり、雄しべはない。
萼筒は長い卵形で、先端がとがる様子の萼歯(がくし)が4個ある。
果実・種子
果実は核果で、12月〜5月に赤く熟す。
長さ1.5〜2cmの長楕円形または卵状長楕円形。
表面は光沢があり、中に核が1個入っている。
核は長さ1.3〜1.5cm、幅7〜8mmの長楕円形。中央に溝がある。
果実が枝についている期間が長く、花と果実がいっしょに見られることも多い。
その他
3.利用
ツヤツヤとした赤い実をつけ、それほど大きく成長しないため、庭木として人気がある。
薬用として、葉をあぶって柔らかくしたものや、すり潰したものをやけどや、はれもの、切りきずなどに外用する。
苦み成分があり、唾液や胃の分泌をうながし、消化を助ける苦味健胃作用として、製薬原料に用いられる。
4.その他
- 植物学者カール・ツンベルクが名付けた。名の由来は、葉だけではなく、幹も青いため名付けられた。
- アオキは、積雪に適応した「ヒメアオキ」という変種がある。北海道、本州の日本海側の多雪地帯に分布する。
高さ1mほどで這うような樹形をし、アオキより葉は小さく、樹木全体が雪に埋もれる高さに収まる。
雪の重さに耐えられるようなしなやかな枝をもち、温かい雪の中にいることで凍害を防ぎ、エネルギーを蓄えている。
このため、若いうちから種子がみられる。 - 中国・四国地方以西に分布する染色体数が2n=16の2倍体の「ナンゴクアオキ」が存在する。アオキは、2n=32の4倍体。見た目では区別しにくい。
APG体系:Aucubaceae(アオキ科) クロンキスト: Cornaceae(ミズキ科) エングラー: Cornaceae(ミズキ科)
5.関連書籍・論文
・『 』p.656.
・津坂真智子, 池田博, 星野卓二(2006 )アオキ(ミズキ科)の2倍体における核形態学的解析.植物研究雑誌(2006 ) 81 巻 2 号 p. 107-112.